東京高判:袋地通行権の無償性の特定承継(消極)

昭和55(ネ)1030 通行権確認請求事件
昭和56年8月27日 東京高判
裁判要旨

土地の分割or一部譲渡によつて袋地が生じた後、袋地or被通行地が他に譲渡された場合~213条の適用はない。

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(以下、抽出・加工あり。原文参照)

~昭和34年~562番4の土地から訴外宅地が分筆され、次いで同年~本件宅地が大蔵省から訴外Cに払下げられたことによつて、本件宅地は~213条②~袋地になつたものというべき~
(原判決は~、

-本件宅地の所有者であつた訴外Cにおいて~西方の公道に通ずる本件通路につきその所有者たる控訴人~に対する賃借権を有していたから~当時本件宅地は袋地ではなく、その後同訴外人が本件宅地の所有権を被控訴人らに譲渡するに際し、本件通路の賃借権を賃貸人に返還したことによつて本件宅地は210条~袋地になつた

とするが、或る土地が袋地~か否かは、当該土地が他人所有の土地に囲繞されて公路に通じないかどうかという客観的な事実によつて決せられる~他人所有の土地に囲繞された土地の所有者がたまたま公路に通ずる他人の所有地につき賃借権を有し同地を通行し得るため、囲繞地通行権に関する問題を生じなかつたといつて、これを以て該土地が袋地でないと解するのは相当でない~)。

 ~本件宅地の所有権は、更に昭和48年~訴外Cから被控訴人らに移転し、又訴外宅地の所有権は、昭和34年~に大蔵省から訴外Dに譲渡され、同47年~に訴外Dから更に訴外Eに移転して、現在に至つている~
 
~本件の場合のように~213条に定める袋地が生じた後に袋地(本件宅地)及び被通行地(訴外宅地)の所有権が他に移転した場合にも、囲繞地通行権に関しなお同条が適用されるのか否か、換言すれば、袋地~所有権の譲受人たる被控訴人らは、被通行地~についてのみ通行権が認められ、他の囲繞地につき~210条による通行権を主張することは許されないものであるのか否かについては、争いのあるところ~。

~213条が土地の分割or一部譲渡のような土地所有者の任意の行為によつて袋地を生じた場合、袋地所有者には~210条による囲繞地通行権を認めないとした趣旨は~土地所有者において、分割or一部譲渡の結果袋地の生ずることを予期しながら、敢えてかかる行為をなしたのであるから、その結果発生する通行権の問題は分割or一部譲渡の当事者内部で処理すべく、周辺の土地所有者に累を及ぼすべきでないとしたことにある

~囲繞地通行権に関する本則はあくまで210条+211条であつて、213条はその特則で例外的な規定であるから、分割or一部譲渡行為の当事者でない特定承継人についてまでなお同条が適用されると解するのは相当でない~

~特定承継人についても213条が適用されると解するならば、例を被通行地の特定承継人にとつてみるに、同条によつて認められる通行権は無償とされている(同条1項但書)から、右通行権のあることを知らずに被通行地の所有権を取得した者が不測の損害を蒙る~(もつとも、右承継人において買受の際隣地との関係を調査すればこれを知り得る筈であるとの反論があり得るが、袋地or被通行地の所有権が転々譲渡された場合、転得者においてこれを的確に調査することは必ずしも容易ではない~、殊に本件の場合のように、袋地所有者において一時期被通行地以外の土地を賃借して同地上を通行し、囲繞地通行権の問題が潜在化していたような場合には、前記の調査にはかなりの困難を伴うことが予想される~。)、承継人の利益を不当に害することになつて妥当ではない~。従つて、本件の場合~213条にはよらず、210条+211条の原則に則つて、通行の場所+方法を決すべきことになる。~

  
この判決文の内、

1.袋地か否かは、他人所有地に囲繞されて公路に通じないかどうかという客観的な事実によつて決せられる。
2.213条の趣旨は、所有者が分割or一部譲渡の結果袋地の生ずることを予期しながらしたのだから、その結果発生する通行権の問題は分割or一部譲渡の当事者内部で処理すべく、周辺地所有者に累を及ぼすべきでない。

と言う部分は、良く引用されているようですが、

3.本則はあくまで210条+211条、213条は例外的な規定だから特定承継人には適用ない。

と言う点に対しては、批判が強いようであり*1

その後、最高裁の判例は出てないものの、下級審には特定承継の場合も無償性が承継されるとしたものがあります。(平成14(ワ)1385・平成15年1月14日神戸地判

*1:「私道と通行権の法律トラブル解決法」宮崎裕二 「~最高裁平成2年11月20日判決において囲繞地の特定承継に関し、213条の適用を認めた以上、袋地の特定承継についてもこれせを認めるのが自然の流れ~」