Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

最高裁:建物の増築と「弱い付合」

昭和44(オ)120 建物収去土地明渡請求
昭和44年7月25日 最三小判
裁判要旨

 ~賃借人が~賃貸人兼所有者の承諾を得て~平家の上に二階部分を増築した場合~、右二階部分から外部への出入りが賃借建物内の部屋の中にある梯子段を使用するよりほかないときは、右二階部分につき独立の登記がされていても~区分所有権の対象たる部分にはあたらない。

裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan・・・・原文
 
(抽出・加工あり。原文参照)

 ~第三建物は、第二建物の一部の貸借人Dが~第二建物の屋上に構築したもの~、~四畳半の部屋と押入各一箇からなり、外部への出入りは、第二建物内の~梯子段を使用するほか方法がない~。
 
 ~第三建物は、既存の第二建物の上に増築された二階部分であり、その構造の一部を成すもので、それ自体では取引上の独立性を有せず、建物の区分所有権の対象たる部分にはあたらない~、
 
 たとえDが第三建物を構築するについて~第二建物の一部の賃貸人Eの承諾を受けたとしても、民法242条但書の適用はない~、その所有権は構築当初から第二建物の所有者Eに属したものといわなければならない。
 
 ~第三建物について~Dの相続人ら~名義の所有権保存登記がされていても~右判断を左右するものではない。 

 この判決自体は知っていて、そもそも登記できたことが変だなどと思っていたのですが、符合の問題として取り上げてあったので、再度、読み直しました。
建物の付合(民法242条「強い付合」と「弱い付合」)-賃借人のした増築(最高裁昭和44年7月25日判決) – 民法判例わかりやすいブログ総則物権編

民法

(不動産の付合)
第242条 不動産の所有者は、~不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。
 
(付合、混和又は加工に伴う償金の請求)
第248条 第242条~前条まで~によって損失を受けた者は、703条704条~に従い~償金を請求~できる。

 そうするとやはり、一般的な「増築」の場合は、「強い符合」となるので242条本文の適用により元の所有者が増築部分の所有権も取得する。ただし248条により償金請求権が発生する。(従って代物弁済契約を結んで、建物の持分を移転することが考えられますね。⇒(親の建物に子が増築した場合 - Genmai雑記帳

 一方、元の所有者の同意を得て、他の者が「付属建物」を建築したような場合は、「弱い符合」となることが多いと思うのですが、主たる建物と一体としてしか利用できないような状態であれば、「強い符合」となる場合もあり得ると言うようなことになりましょうか?(所有者と建築した者との意思にも関係してきそうですね。)

 また、実務的に良くあるのは、上記のような「強い符合」であっても、固定資産税の課税においては、増築者の名義として扱っていることです。課税台帳上は、あたかも「独立建物」のようになってしまい、まさに「弱い符合」と同様になってしまいます。
 この場合、元の建物と増築部分が別々の建物として評価されていることから、全体としては、それぞれの価格分の共有として扱うことになってしまい、言ってみれば、上記の「償金請求を代物弁済によって払った結果、共有となっている」のと同じようなことになってしまいます。
 元の所有者でない者が増築して、それが未登記の場合、これを売買するような場合に、上手に処理しないと前所有者のまま残ってしまいトラブルに原因になりかねませんね。